スポーツリハビリトレーナーの世界〜長く戦いたいアスリートの救世主へ~

近年、スポーツ選手が怪我から復帰する過程やその予防に対する知見が広まり、「リハビリ」という言葉もしばしば耳にするようになってきた。安静にすればそれでいいわけでも痛みが取れれば復帰していいわけでもなく、段階を追って運動機能を回復させ、少しずつ一線に復帰する・・・

こんな考え方がごく当たり前のようになったのも、メディアやリハビリに関わる人の根強い発信からだろう。リハビリを専門に学んでいきたい、という人も増えてきたと見られるが、実際どのような仕事があるのだろうか?

スポーツリハビリトレーナーという仕事

怪我や不調に対して診断を下し治療を主に施すのは医師の仕事だが、当人にとってはトレーナーとのリハビリを通して、以前と同じように運動ができるまでに復調することの方が長く険しい道であることも多い。

日本にはトレーナー職そのものには国家資格が存在しないものの、各々講習や試験をクリアして現場に従事するのが「トレーナー」であり、中でもリハビリテーションに軸を置いて関わるのが「スポーツリハビリトレーナー」である。

 スポーツにおける不調の原因は、怪我はもちろんのこと病気や加齢、発達段階における弊害(例:成長痛)など、様々なものが考えられる。その原因と顕在化している症状などに応じて、運動機能を回復させるための手助けをするのがスポーツリハビリトレーナーだ。

また、昨今では痛みや不調を抱える「前の段階」で予防やコンディショニングにアプローチする需要も高まっている。運動の基礎となる筋力を鍛えたり、関節の可動域を広げたりといったトレーニングは、選手生命をより長くする意味でも注目されている。

高齢層にとっても健康的で元気でいられることへのニーズが高まっていることから、将来性は高い職業と言えるだろう。

スポーツリハビリトレーナーの仕事内容は?

前述の通り、スポーツリハビリトレーナーの対象者は、スポーツの第一線で戦うようなアスリートから健康を気遣う高齢者まで幅広く、就職先や仕事内容も多岐に渡る。スポーツの現場であれば怪我や障害を抱えて戦列を離れている選手に寄り添い、運動機能のアセスメントやめざすゴールを踏まえながら、心身のケアを行うことが役割となる。

具体的に行うこととしては、スポーツマッサージや鍼灸、練習や試合に復帰するまでのトレーニングメニューの立案・軌道修正、テーピングやストレッチの指導なども含まれるだろう。

 一方で医療機関となると、主には怪我や病気で思うように動けなくなった患者さんに対し、運動機能の回復を手助けする。中には更衣や食事、排泄といった日常生活の基本的な動作すらも思うようにいかない方もいることから、きめ細かいサポートや一時的な代替手段の提案を行い、併せて心のケアも欠かさずに実施する。

身体機能や生活機能を取り戻すための機能訓練プログラムの作成に当たっては、関連する医療関係者はもちろん、退院し自宅等に戻ったあとでもサポートが行き届くよう、地域と連携を図る場合も多い。

 以上に加えて、近年特にニーズが高まってきたのが、介護の現場でのリハビリトレーナーの活躍である。高齢化が進む日本では、お年寄りであってもできるだけ長く、自分の力で生活する能力を維持・回復することが求められている。

そういったなかでリハビリトレーナーの存在は必要不可欠なのだ。従来の医療では回復が難しいと言われていたような麻痺や障害でも、運動プログラムや段階的なリハビリテーションによって少しずつ回復するケースも少なくない。トレーナーとして根気強く症状や課題に向き合うこと、またコミュニケーションを重ねて信頼を得ることで、様々な年齢層の力になりうると言えるだろう。

スポーツリハビリトレーナーになるには?

さて、スポーツトレーナーになりたいと思ったらどのようなプロセスを経ればいいのだろうか?他のトレーナーと同様に必須となる資格はないが、公益財団法人日本スポーツ協会が認定する「アスレティックトレーナー」や日本アスリートリハビリテーショントレーナー協会が認定するトレーナーなどの資格を取得して現場に出る場合も多い。

いずれにしてもリハビリテーションそのものに関する知識や手技はもちろん、アスリートの抱えやすい障害や慢性疾患について、栄養指導やメンタルケアについても学んでおくと役に立つに違いない。

リハビリトレーナーとして一線で活躍するまでには少なからず道のりがあったり、資格を取った方がいいとなったりするるとしり込みする人もいるかもしれないが、それらは乗り越えるべきハードルの一角に過ぎない。ひとたび目標のポジションについたとしても、日々自分の知識や技術をアップデートし、対象者のコンディションを気遣いながら柔軟に対応していくことが求められる。

すなわち、スポーツに取り組むアスリートと同様、高みをめざした自分なりの努力を続けていこう。