アスレティックトレーナーの資格とキャリア~日本のトレーナー資格と必要性を考える~

「トレーナー」というとどんなイメージを持つだろうか?最近はメディアに出るような人も増えてきて、自分の積み重ねたトレーニングやそのノウハウで食べていけるというイメージもついてきたかもしれない。

実は国家資格のような厳密なフレームが無く、個人の捉え方や関わり方に委ねられるのがトレーナーという職業。この記事では民間資格の必要性やキャリアについて紐解いていく。

アスレティックトレーナーとは

アスレティックトレーナーの役割について、後に触れる日本スポーツ協会では下記のように定義している。

”公認スポーツ指導者制度に基づき、JSPO公認スポーツドクター及び公認コーチとの緊密な協力のもとに、競技者の健康管理、外傷・障害予防、スポーツ外傷・障害の救急処置、アスレティックリハビリテーション、体力トレーニング及びコンディショニング等にあたる。” 

(日本スポーツ協会)

すなわち、競技前後はもちろん、その活動基盤となる日常生活においても心身とも健康が維持できるよう働きかけ、ベストパフォーマンスを支える役割を担っている。

かつては定義にもあるように、外傷や痛みを抱えた際の手当てをする役回りが大きかったが、近年は怪我や疾病を予防するためのコンディショニングの側面も大きく、日常的な関わりが求められるケースも多い。

また対象についても、アスリートはもちろん趣味で運動を楽しむ人や、健康の維持増進のために身体を動かす高齢者へも広がっており、その人その人の状況や段階に応じたアプローチが一段と求められている。

アスレティックトレーナーと資格

冒頭でも触れたように日本におけるアスレティックトレーナーの資格は民間団体によるもののみで、主なものは次の2つである。

日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)

協会の養成講習会を受講するか、適応コース承認校(大学や専門学校)に入学し卒業するかのいずれかが必要。合格率は10%前後と難易度が高いと言われている。

ジャパン・アスレティック・トレーナーズ協会認定アスレティック・トレーナー(JATAC-ATC)

JSPO-ATと異なり、指定の講習や協会の認定する学校での単位取得によって、取得できる資格。

前者にフォーカスを当てると、JSPO-ATを取得するには、日本体育協会の養成講習会を受講、もしくは適応コース承認校に入学・卒業する必要がある。養成講習会は団体の推薦と日本体育協会の認可が受講条件で、既に活動実績がないと厳しく、「これからトレーナーになりたい」という人は承認校に入るのが一般的だろう。

講習会・承認校では、スポーツ医科学やトレーナーに必要な手技、付随する栄養学や生理学なども学び、資格試験の受験資格を得る。試験は理論試験と実技試験の2つがあり、合格して初めて資格を得ることができる。

日本で活躍するのに資格は必要か…?

トレーナーにはなりたいけど、資格取るのは少し億劫…という人も中にはいるかもしれない。日本に国家資格が無いとなれば、なおのことだろう。

 確かに諸外国には国家資格が存在する国もある。例えばアメリカでは「NATA-BOC公認ATC」という資格を取得する場合、この資格試験を受けるには「アスレティックトレーニング教育認定委員会(CAAT)」によって認定された大学の養成カリキュラムを受けて学士を取得する必要がある。当然資格を取らない以上は「アスレティックトレーナー」と名乗ることができず、逆にATCを持っている人は準医療従事者として認められる。

 海外進出までを考えている人はそうしたところへ目線を置くのもひとつだが、ひとまず日本で活躍する契機を掴みたい人はどうしたら良いのだろうか?

・資格の必要性

資格を取ることでのメリットとして、体系立てた学びができることや、ケアを受ける人や採用する人にとって資格があると安心できる材料になるため採用確率が上がることなどが挙げられる。一方で、資格がいらないなら資格取得にかける時間がもったいないという考えあるかもしれないが、自身がサポートしたい選手や人にとってどういった状況が最も理想的なのかを考えた上で、結論は出すべきだろう。

・資格を持ってる・持ってないことでの就職やキャリアップへの影響について

実業団やプロスポーツクラブは資格を持っているまたは実績がある人を採用する傾向があり、現場で経験を積みながらステップアップする選択肢もあるが、その中で自分が力を入れたい分野や軸にしたい考え方が見つかったら、その軸に沿った資格や研修を受けて研鑽を磨くことは必須だろう。

・キャリアの選択肢

現在は、従来と比較し、キャリア選択の幅が広がっている。自分がどういった将来像を描くかが大事になってくる。+自分の対象となった人に対してどれだけ誠実に対応できるか、良好な関係性を築き上げられるかが重要である。

資格は必要か、その答えは自分のキャリアプランにある

見てきたように、日本においては確固とした資格の存在感があるというよりも、その所持を強みのひとつとして自らのキャリアを切り拓いていく、という傾向が強い。一人ひとり個性も力量も異なる“人”を相手にする職業である以上、正しい知識や技術の習得や迅速な判断は欠かせないが、一番重要なのは“常に自分自身をアップデートさせる意識”かもしれない。スポーツ医学やトレーニング理論は年月を経て更新されたり新しい発見が加わっていく。

資格を取ればそれでOK、就職できれば成功、と気を抜くことなく、対象者の競技力アップやコンディションの向上に向けて研鑽を積み続ける姿勢がこれからも求められていくだろう。