スポーツトレーナーのリアルと課題。スポーツトレーナーは何を目指すべきか?

昨今テレビやSNSでも「スポーツトレーナー」という職業の人をよく目にするようになり、中には自分がプレーするのではなく競技活動やリハビリテーションを支える側もいいな、と興味を抱いた人もいるかもしれない。諸外国に比べて発展途上の側面はありつつも、2021年には東京オリンピックがあるほか、パーソナルトレーナーのような職業やオンラインレッスンなどが普及してきたこともあり、今後に抱くポテンシャルも大きい。

スポーツトレーナーという職業のリアルとは?

実のところ「スポーツトレーナー」という職業には必ずしも資格が必要というわけではなく、ましてや業務内容が細かく定められているわけでもない。そのため、自分がどこまでをカバー範囲として対象者に提供するかは各々に委ねられている。

例えばプロスポーツチームと契約するスポーツトレーナーの場合は、ほとんどの人が柔道整復師や鍼灸師などの国家資格をもち、医療類似行為を行うことに加え、怪我の予防、競技に合わせた体の使い方の指導、メンタルケアと仕事の領域は広がり続けているのが実情だ。

 スポーツトレーナーの活躍できるフィールドはチーム帯同するようなケース以外にも様々にあり、整骨院やマッサージ店で患者さんをケアしたり、フィットネスジムで個々に合ったトレーニングメニューを提案したり目標に応じたアドバイスをするケースも多い。ここ数年はパーソナルトレーニングの敷居が以前にも増して下がっており、個別にトレーニングを指導する形も増えてきた。あるいは高齢化が進む中で年を重ねても健康的でいたいというニーズが高まってきたことから、シニア層に対する健康維持増進に向けたアプローチも求められている。

 業界として給与水準は高くないが、仕事やそのための研鑽のなかで身体を動かすことも多いことから体力も求められ、自分の中で目標やキャリアの方向性を見出さないには続きにくいとも取れる。先に述べたようにパーソナルトレーニング市場も拡大を見せ、1,000億規模とも言われていることから活路のひとつではあるが、ライバルがそれだけ多いことも忘れてはならないだろう。

トレーナーという職業の可能性とリスク

トレーナーという仕事は、対象顧客の対象幅が広いことが一つの側面として言える。

ダイエットに限らずボディメイク、競技力の向上だけでなく怪我予防・楽しむためのコンディショニング、若年層だけでなく子どもから大人まで、トレーニングの目的や主旨だけでなく、年齢層も非常に幅広い。

様々なタイプの方をクライアントとして持つことに関心がある人にとっては、その間口が広いため非常に有意義な仕事であると言えるだろう。

一方で、体力が非常に必要な仕事であり、さらには給与がそこまで高くないといった、マイナスの面もある。また、プロチームで契約されるようなトレーナーに憧れる人もいるかもしれないが、多くの場合は1年契約。長期的に仕事をもらいながら選手や関係者の信頼を得るにはかなりの努力が必要である。加えて、トレーニング理論や方法が日に日にアップデートされているため、勉強も欠かすことができないため、少々割りに合わないと思う人もいるかもしれない。

トレーナとして何を目指せばいいのか?

現在、スポーツトレーナーとして、プロスポーツに関わるトレーナーの仕事は、実績があるベテランに依頼やオファーが集中しがちである。ただ、高齢化が進んでいることで、今まで以上に幅広い層に対してトレーナーとしてのアプローチが求められているとも言える(体力や身体機能が弱った状態・痛みを抱えながらの運動やリハビリテーションについてなど)。パーソナルトレーナーの一般層への普及も追い風として捉えることもできるだろう。従来のジムや病院に併設されているリハビリ施設で働く以上に、様々な選択肢が増えている。

その中で、スポーツトレーナーとしてのキャリアパスも、選択肢が広くなっているのは同様に言えることだ。積み重ねた実績から、独立するのもいいかもしれないし、リハビリ施設やジムなどの実践や経歴を生かし、組織の中で役職をつけていくパターンも考えられる。

選択肢が多岐にわたってある中で、トレーナとして何を目指すかを決める際は、自身が何を成し遂げたいのか、何を理想とするのかを明確に理解することが重要である。

人に決められるでもなく、流されるでもなく、自身が思う理想的な状態を描き、そこから必要なピースを見つけて身につけていくというフローを踏むことができると、より自身のトレーナーとしての価値だけでなく人間としての価値が高まっていくのではないだろうか。