フィジカルトレーニングと聞いて、どのようなことをイメージするだろうか?人によってはその言葉から身体を追い込むようなトレーニングを想像するかもしれないが、必ずしもそうではなく、怪我や不調を未然に防ぐための基礎トレーニングを始め、種類や強度も様々だ。そうしたトレーニングを専門として指導・サポートする「フィジカルトレーナー」にこの記事では迫っていこう。
フィジカルトレーナーとは
スポーツに携わるトレーナーにも厳密にはいくつかの種類があるが、そのうちフィジカルトレーナーは選手の怪我を防ぎ、パフォーマンスを最大限引き出すために尽力するのが仕事だ。実際にフィジカルトレーナーとして活動する中野ジェームズ修一氏は記事の中で次のように述べている。
私の仕事は「フィジカルトレーナー」になります。そう自己紹介をすると、よく「筋トレを指導する人ですね」と言われますが、正確には「体の弱点を強くする専門家」です。故障した選手の体をマイナスとしたら、本来のゼロの状態に戻すのがコンディショニングトレーナー。ゼロを「10」「20」の状態にするのがフィジカルトレーナーの役割です。
(スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」より引用)
すなわち怪我や痛みを抱える「前の段階」で選手にアプローチし、個々の身体構造や筋力、柔軟性などを確認しながら、パフォーマンスを最大限に引き出すトレーニングやメンテナンスのメニューを立案する。トレーニング方法そのものはもちろん、その前提となる人の身体の成り立ちや運動のメカニズムを十分に理解している必要があり、現場に出る前はもちろん、出てからも日々勉強の連続となる職業だろう。
フィジカルトレーナーの仕事内容は?
フィジカルトレーナーの仕事は事細かに決められたものがあるというよりも、対象とする選手やチームの抱える課題や目標などによっても異なり、だからこそトレーナー個々の手腕が試される。
具体的に想定される仕事としては、次のようなものが挙げられる。
・アセスメント・・・
運動する上で障壁になっている痛みや動きの制限などについて、本人が自覚しているものはもちろん、第三者から観察してこそ気づく癖や課題も含めて洗い出し、度合いや緊急性について客観的に評価する。前提として人間の運動器(運動に関係する器官や臓器)の働きについて十分理解している必要があり、より良いパフォーマンスに向けての課題を見出していく。
・トレーニング/ケア計画の立案・・・
アセスメントで確認できた内容を選手やチームと共有し、具体的な目標を決めたうえでトレーニングのプランを練っていく。本人が思い描くプレーや望む結果を尊重する一方で、現実的でないプランや別の箇所を痛めかねないトレーニングには専門的な見地から忠告を入れ、段階的にゴールへ向かえるようリードする。
・進捗の確認とフィードバック・・・
ひとたびトレーニング計画を立てたところで、トレーナーの役目はおしまいというわけではない。日々トレーニングやケアに対する身体の反応や気持ちの変化を確認し、必要に応じて軌道修正していく必要がある。トレーニング中の様子を観察して正しく動作が行えているかフィードバックしたり、本人では気づきにくい変化をトレーナーの口から伝えたりすると、継続するモチベーションにも繋がる。
・他職種との連携・・・
フィジカルトレーナー自体は現場に一人であることが多いが、選手にとって自身の競技に関わる人間は様々にいる。監督・コーチ陣や医療スタッフなどとも適宜コミュニケーションを図りながら、より良いパフォーマンスに向けて総合的な観点が持てるように心がけたい。連携する中で見えた課題に応じて新たな勉強を重ねたり情報を収集したりすることで、トレーナーとしての幅もますます広がるに違いない。
取得したい資格や将来性
は実際フィジカルトレーナーになりたいと思った際に持っておくべき資格はあるのだろうか?国内ではフィジカルトレーナーそのものの国家資格は存在しないこともあって、トレーナー個々が自身の志向や現場のニーズに応じて知識や経験を積み重ねるほか、理学療法士や柔道整復師といった資格を取得しているトレーナーも多い。民間団体のなかでは、一般社団法人フィジカルトレーニング協会(PTI)が講習を実施しており、指定の講習を受講のうえ認定試験に合格するとPTI認定フィジカルトレーナーとして認められる。
現在PTIでは、レベルごとに2つの講習を実施しています。下記の2つになります。
【1】ベーシック講習会
フィジカルパートで成果を出すためのフィジカルデザインの考え方を、また、メンタルパートではモチベーションテクニックの基礎、動因と誘因とモチベートの3ステップを学びます。
【2】アドバンス講習会
フィジカルパートではダイエットや技術力向上など、様々なシチュエーションに応じたプログラムデザイン、またメンタルパートではモチベーションテクニックの向上、交流分析と人格別アプローチ手法を学びます。
※アドバンス講習会終了後に認定試験がおこなわれ、合格するとPTI認定フィジカルトレーナーの資格を取得することができます。講習会の場所、参加費等は変更される場合がありますので、受講前にPTIに直接問合せるか、ホームページで確認してください。
身体はもちろん選手を理解し、そのひと個人の“ベスト”へ
今回の記事では、フィジカルトレーナー の仕事や資格取得のステップなどをお伝えしました。 フィジカルトレーナー は、単に体を増強するためのトレーニングをサポートする役割だけでなく、試合や練習中の怪我を直すサポートをするだけで無く、選手が最高のパフォーマンスを発揮するために、ボディケアを行うなど幅広い役割を担います。
もちろん、選手だけで無く一般の方から高齢者の方まで、対応するユーザーも幅が広いですが、言い換えれば活躍の場が広いということ。今後、高齢化社会の進行によってさらなる活躍の場が広がる可能性を秘めている。この際に、改めてフィジカルトレーナー としてのキャリアを考えても良いのではないだろうか。