プロアスリートを支えるチームトレーナーの仕事とは?

プロ野球やJリーグなどプロの世界を見ていると、輝かしい選手の傍らで、選手が抱える痛みや疲労のケアに励んだり、地道なリハビリテーションに寄り添ったりするトレーナーの姿に目がいく人もいるかもしれない。メディアはもちろん、選手自身がSNS発信することにより、裏方の仕事にも注目や感謝のまなざしが向けられるようになった近年。もし自分がそうしたトレーナーのポジションに就きたいと思ったら、何から始めたらいいのだろうか?

プロスポーツチームのトレーナーとは

そもそもスポーツトレーナーとは、スポーツ選手がより良いコンディションで試合や大会に臨めるよう、主に身体面から指導やサポートを行う人のことだ。仕事は主に次のようなものがある。

運動機能やパフォーマンスを維持向上させるためのトレーニングに対する指導

どんなにいい選手でも苦手な動きや長年の癖でうまく使えていない筋肉があるゆえ、トレーナーが関わることでの伸びしろは大きい。また、目の前の試合におけるパフォーマンスはもちろん、シーズンや次の大会までも見据えた長い目線で、計画的なトレーニングメニューを組むことが求められる。

スポーツに際する痛みや外傷の予防と応急処置、復帰するまでのリハビリテーション

どんなに気を付けていても思わぬ痛みや怪我にさいなまれることはアスリートにとって珍しくない。そこでチームに帯同するトレーナーは、試合や練習中の応急処置はもちろん、復帰するまでの道のりも医療機関等と連携しながらサポートする。個々の癖やスポーツごとの特性から、起こりうるアクシデントへの予防に働きかけるのも大事な役割の一つだ。

試合や大会に向けたコンディションの調整、心身のサポート

時には選手が嫌がるような厳しいトレーニングを課すことで、試合に勝てる力を育んでいくのもトレーナーの仕事だが、一方で本番に最も良いパフォーマンスが出せるように、適度な休息や強度を落とした運動を意図的に取り入れるのもトレーナーの仕事である。選手によっては追い込みすぎて怪我をしてしまったり、なかなか結果の出ない日々にモチベーションを落としたりしているリスクもある。そうした時にいち早く変化に気づき、心身のサポートをしたり調整メニューを提案するのも力の見せどころだ。

プロチームとトレーナーの現状

なお現状として、プロのスポーツチームにはおおよそトレーナーが帯同しているが、専属でないケースも多く、アマチュアについては個人の通院に任されているケースが多い。

近年、日々のコンディショニングやリハビリテーションの“質”を重要視する傾向は高まっているものの、トレーナーを専属で雇い、遠征に帯同する場合は諸経費も・・・となると、どうしても経済的に厳しくなってしまうのがスポーツ界の現状だからだ。

マイナースポーツを中心に、トレーニングジムや整骨院などがスポンサーとなって、クラブは無償~安価に指導・ケアを受けられるような座組も散見される。

 もっとも、仮にプロと契約できたとしても、1年単位の有期契約のことが多いのも現実だ。将来が不透明な中で活動をせざるを得ない、あるいは点々とするケースもありうるとすると、熱意と根気が求められる仕事と言える。今後の展開も含めて、自身の携わりたいスポーツやクラブの現状を調べてみるのもおすすめだ。

プロスポーツチームのトレーナーになるには

では、いざプロスポーツチームのトレーナーになりたいと思ったら、どういったプロセスを踏めば良いのだろうか?まず資格については、他でも触れている通りトレーナーの活動自体に必須なわけではないが、プロ組織の場合は日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーなどの資格を前提としている場合も多い。

アマチュアチームであれ十分な経験があればそれが代わりになることもあるが、知識やスキルの網羅性や第三者から見た信頼性を担保する上でも、しっかりとした資格を取っておいた方が良いだろう。

 近年はトレーナー養成を主眼とした学部や専門学校も増え、広告を目にすることも増えただろう。多くの選択肢があると今度は「どこに行けばプロチームに入れるんだろう?」「就職実績にあれば自分にも可能性があるのか?」といった迷いが生じかねない。

 実はどこへ行くにしても、養成機関(大学・専門学校・通信講座など)を出てすぐに希望のポジションにつくのはかなり難しい。自身の身に着けたスキルや取得した資格がどうこうもそうだが、毎年決まって採用があるとも限らなければ、求人情報がオープンになるとも限らないためだ。

ただし、ストレートに自分のめざす場所にたどり着けなかったとしても、現場経験を積み、関わった選手が結果を出したりコンスタントな成果が認められることで、自身の価値が高まり転職に繋がることもある。

 近年では海外でトレーナーとしての勉学や資格取得を経て、日本に戻ってきてからトレーナー活動を再開する人も多い。諸外国の方が専門的に学べる学部やしっかりとした資格体系があることもあり、差をつけるうえでそうしたプランを練るのも一つだろう。

知識や技術はもちろん、人間性やコミュニケーション力を大切に

 テレビを始めとするメディアの影響から、プロのアスリートに携わると聞くと華々しいイメージばかりが先行するが、実際はなる前もなってからも地道な努力の連続ばかりか、表舞台からは見えないような地味な仕事も多々存在する。「人」を相手にするからこそ、一度うまくいけば次もOK…とはいかない難しさもあるだろう。ただ、それだからこそ面白い、やりたいことが尽きない世界なのかもしれない。

どんなことにも誠実に、自分らしく対応することで、次の道が拓けていくはずだ。まずは歩みを止めずに、できることから取り組んでみよう。