近年、注目を浴びるeスポーツ。日本もとより海外では特に盛り上がっており、賞金が数億円にのぼる大会もあるほどだ。日本は法律の関係でどうしても少額な大会にとどまりがちだが、それでも国内外の盛り上がりに押されて近年は競技の素地が整えられつつある。果たして、今後オリンピックの競技種目にもなるときが来るのだろうか?
eスポーツの日本における変遷
eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略称。PS4・Nitendo Switchなどのコンシューマー(一般消費者向け)ゲームやPCゲーム、スマホゲームで競技することを指している。1997年にはプロフェッショナルリーグを立ち上げていたアメリカなどに比べると遅れを取る日本だが、「eスポーツ」や「プロゲーマー」といった言葉は徐々に浸透していると言っていいだろう。
あとに述べるように複数の障壁はあるものの、eスポーツが将来的にオリンピック競技として認められることも噂されている。いわゆる「ゲーム」が国際的な競技大会に、ともなれば、センセーショナルな出来事に違いない。日本でもニュースとして取り上げられたこともあり、少しずつではあるが準備を始めている。
前提として、eSportの団体が「日本代表」としてオリンピックに参加するためには、日本オリンピック委員会(JOC)に加入しなければならない。そして、JOCに加入するためには、その競技を国内で唯一統括している団体になる必要がある。以上を踏まえて2018年、日本国内に存在していた3つのeSports団体を統合して、「日本eスポーツ連合(JeSU)」が設立された。
プロライセンスができた!それってどんなもの?
設立されたJeSUでは「プロライセンス」を設けている。公認する大会や国内外の大会成績を見て、連合関係者がふさわしいと判断した選手を勧誘、本人の承諾が得られて手続きが済むことで当該選手は晴れてライセンスを手にできる。なおJeSUのプロライセンスには、年齢や法人か否かによって3つの種類が存在している。得られる権利としては、
・JeSUの公認する大会にプロとして出場する権利
・プロとして出場したJeSU公認の大会で、賞金などの報酬を獲得できる権利(ジャパン・eスポーツ・ジュニアライセンスを除く)。
・JeSU公認の国際大会で、日本代表として出場する権利
といった点だ。よってJeSUが関与する場面においては、プロ選手として活躍しやすいと言える。ただし、裏を返せばJeSUが関与しない大会では、プロライセンスの有無は大きな意味を持たない可能性もある。そもそもeスポーツのプロ選手を名乗るうえで、ライセンスが必須なわけではない。「eスポーツのプロ選手」とは、eスポーツの大会出場や動画配信などを通じて、eスポーツで生計を立てている選手のことを指すからだ。もちろん今後の連合の動きやeスポーツ全体の社会的な待遇により重要性は増すかもしれないが、現時点では発展途上の側面もあると言えるだろう。
果たしてオリンピック入りは・・・?障壁はどこ?
今後のeスポーツ界の見通しについてだが、まず大きな鍵を握るのは世界最大のスポーツの祭典・オリンピックで採用されるかどうかであろう。実のところ、現時点では難航しているのが正直なところだ。その理由としては、「著作権の問題」「普遍性の不確かさ」「国際eSports連盟がオリンピック承認団体ではないこと」などが挙げられる。
基本的に、スポーツには著作権がないものの、eSportsのゲームにはゲーム制作企業という開発元があるゆえ、著作権が存在する。それにより利用したり放送したりする上で著作権料が発生してしまうのだ。「普遍性」ということについても他のスポーツには無い障壁があり、サッカーや野球といった通常の種目と比較して時代や開発の進捗によってプレー条件やデバイスが時々刻々と変わってしまうのだ。最後にオリンピック承認についても、格式高い国際オリンピック委員会の中には、eSportsに対して否定的な意見も多数あるのが現実。
エキシビジョン的に取り入れられることがあっても、正式種目になるにはまだまだ遠い道のりがあるのかもしれない。
eスポーツの今後の動向に注目!
日本ではJeSUの設立も大きな要因となり、eスポーツを取り巻く環境は時々刻々と改善しつつある。国際大会への出場機会も増え、選手のモチベーションも向上、賞金も多額が獲得できうると、今後はレベルも上がり…と、ますます良循環に入ることが期待される。
一方で今後を長期的な視野で見た時に、eスポーツ自体がまた新たな壁にぶつかりうることは少なからず予想され、オリンピック種目に認められるかどうかもその一つと言えるだろう。ただいずれにしても、「スポーツ」という概念や関わり方について、新しい風が吹きつつあることは間違いない。ゲームに興味がある人もそうでない人も、じっくり動向を見守ろう。