スポーツをしている人はもちろん、そうでなくてもテレビなどで勝利や記録に向かって果敢に挑むアスリートの姿を見て、勇気やエネルギーをもらうという人は多いだろう。
オリンピックなどの祭典が近づくと街やメディアも華やぎ、気づけば「自分もこういうイベントに携わりたい!」「仕事にするにはどうしたらいいんだろう?」と思い始めるかもしれない。
今日はこの答えを解くうえでキーになる「スポーツプロモーター」という仕事について掘り下げよう。
スポーツプロモーターとは?
スポーツプロモーターとは、スポーツを主とするイベントの企画から運営までを手掛ける職業のこと。当然自分だけでイベントを作るのは無理だが、場所やコンセプト、演出などについて中心となって企画し、それに応じた体制作りも先陣を切って進めていく。
ゼロからイベントを考える場合はもちろん、先に実施が決まっているものであっても、スポーツプロモーターの役割は大きい。例えば2019年のラグビーワールドカップは記憶に新しいところだが、その開会式で歌舞伎の舞が披露されたり、航空自衛隊の「ブルーインパルス」が展示飛行を行ったりといった演出があった。
同じ「日本らしさの表現」であっても、2016年のリオ五輪では安部首相がマリオの格好をして日本カルチャーを象徴したように、狙いに対して「どんなプログラムで」「誰を起用して」「どんな音楽で」…という選択肢は未知数であり、だからこそスポーツプロモーターの腕の見せ所がやってくるのだ。
スポーツプロモーターがイベントを作り上げるまで
イベントの盛り上がりを思い浮かべると、スポーツプロモーターの仕事も一見華やかに見えがちだが、実際は地道な作業に追われることも多く、少なからずロングスパンの戦いとなる。イベント開催までの具体的なステップは下記の通りだ。
1.企画イン
国際大会のように開催が決まっているものを担当する場合は、行政や担当企業からのオリエンテーションが始動の合図となる。自身でゼロから立ち上げる際は任意の時期からスタートが切れるが、いずれにおいても油断は禁物。イベントを通して成し遂げたいことや、その際にターゲットとなる層をしっかり見極め、かつ周囲を巻き込むうえで軸となる考えや方向性を資料化しておく必要がある。
2.アサイン
イベント骨子が固まったら、開催までのスケジュールと各フェーズで必要となる業務を洗い出し、自身では賄いきれないタスクやプロの力が必要な部分は外部へアサインしていく。この時点でタスクの抜け漏れがあると、イベント直前になって慌てることになるため、先を急がず必要なリソースをしっかり見極めることが肝要となる。
3.実働
アサインが済んだら、スケジュールに沿って全体を進行させていく。仮に自分の手を離れたタスクであっても、滞りや認識の齟齬が起きていないか、各所との連携はうまくいっているかなどを常に確認し、必要に応じて自分が交渉に動いたり、突発したタスクに対してさらに人やモノを確保したりと、主体的に動かなければならない。スケジュール通りに進められることが一番だが、後工程なにより当日の万全を第一に考えて、時に遅らせる・返事を待つなどの判断力も求められる。
4.リハーサル
イベントの直前時期になったら、本番に限りなく近い環境でリハーサルを行う。いつ・誰を呼んで・何回行うかに決まりはないため、そうした見極めもイベントプロモーターの経験や判断にゆだねられる。ここで発覚した懸念点は隠したりごまかしたりせずに対応してこそ、より良い本番に繋がる。
5.本番
リハーサルやその後の対応を含めて、これまで準備してきたことを総動員させて本番を迎える。もちろんリハーサルでも起きなかったようなハプニングも起こりうるし、例えば屋外の場合は天候に左右される部分もあるなど、当日にならないとわからない点も多々ある。何が起きてもイベントの中心者として誠意を持って対応することが肝心だ。
6.総括
イベント本番を成功させることが何よりも重要ではあるが、願わくは次回に繋がったり、形を変えてでも未来に生きることが望ましい。成功要因を振り返ることはもちろん、失敗についても原因と改善策を明確にし、関係者で総括として共有する時間も持つ。
スポーツプロモーターになるには?
見てきたようにイベントプロモーターには広い視野と冷静な判断、粘り強く取り組むスタミナなどが求められることから、就職してすぐに一人前になる、というのはなかなか難しい。
ただ、学生のうちからイベントの企画・運営経験は積もうと思えばできるし、イベント自体が十者十通りだからこそ自分自身の強みや積極的なインプットも欠かさず育んでおきたい。
オリンピックを始め国際レベルの規模になると、イベント企画は大手広告代理店(電通、博報堂など)に委ねられることが多い。ただ地域のイベントなどはイベント専門会社に依頼が来ることも多いし、広告代理店も一部の業務をそうした会社に委託するケースもある。
プロ野球やJリーグのようなプロスポーツクラブの場合、クラブ内にイベント企画の部署がある傍ら、出資や多メディアへの展開が見込める場合は、クラブから代理店に依頼することもある。
日頃からアンテナを高く、主体的に動いてみよう
自分の企画したイベントがきっかけで、何人もの人が感動を味わったり、スポーツやクラブの虜になってくれる・・・そう考えるとイベントプロモーターの仕事に憧れる人も多いだろう。
実際、そこにたどり着くまでの道は長く険しいが、得られる糧も多い。少しでも興味を持った人は、実際に行われているイベントに対してアンテナを高く張ってみたり、何かチャレンジできることがあれば積極的に動いてみよう。