企画・キャスティングからマネタイズまで一手に担う!? 知ってるようで知らない、スポーツと広告代理店の関係

スポーツの国際大会や新商品発売などに際して、時折耳にする「広告代理店」。文字面から広告を作っているのだろう…とは思いながら、それ以上に想像がつかないという人も少なくないのではないだろうか?

実のところ、スポーツのプロモーションには密接な関係がある存在。将来の選択肢の一つとして考えてみてはどうだろうか?

広告代理店とスポーツ業界における役割

電通、博報堂を始め、アサツーディ・ケイや最近ではサイバーエージェントなども、広告代理店として腕を振るうニュースを耳にした人も多いだろう。

広告代理店とは、広告主―主に企業、国際大会等の場合は行政―から依頼を受け、依頼側の商材やターゲッティングを踏まえながら、最適なプロモーションのあり方を提案する企業体のこと。

そこには広告の掲出先・掲出期間も含まれれば、クリエイティブにおいてもキャッチコピーや起用タレントなどを提案し、最終的な制作までを担う。仕事内容やそれに伴い関わる職種が多岐に渡るため、一部を外注する場合もあるが、大手の代理店の場合は複数部署の連携で全てをまかなう場合もある。

広告業界の仕組みの解説図

(参考:https://job.rikunabi.com/contents/industry/1052/

スポーツも含め、極論、自社でプロモーションを企画~実施している場合も多々ある。後にも触れるがSNSが販促ツールとしても力を持ったことで、担当社員が自身で運用することも比較的容易になった。

ただ、SNSでも作りこんだコンテンツを流してエンゲージメントを飛躍的に伸ばしたい場合、あるいは有名タレントを起用して新商品発売イベントまでつなげたい場合、国際大会のように全国規模で交通・マスメディア・ウェブをジャックして盛り上げたいといった場合は、広告を専門に扱う業者―上の図にあるような広告代理店や制作会社など―に頼んで然るべきとなる。

広告代理店の主な仕事

では、広告代理店は具体的にどのような仕事をしているのだろうか?

企画・・・

広告代理店は基本的に広告主の依頼によって業務がスタートする。広告主は販売したい商品やそのターゲット、売り上げ目標などについてオリエンテーションを行い、代理店の担当者はそれに基づく販売企画を作成する。広告代理店の中で企画を固めきるというよりも、あくまで代理店は“提案者”。いくつかの案を社内で出し合い、広告主と一緒に揉んだ上で、企画の完成度を高めていく。この段階でメインコピーやグラフィックの基本路線が決まることが多い。

・他社事例の収集・・・

提案段階、制作段階いずれにおいても必要になるのが他社事例の収集。観点はフェーズごとに異なるが、他社と似たようなことをしないためという側面もあれば、他社の事例をヒントに新たなアイデアを生み出すこともある。無論、ネーミングやキャッチコピーが似てしまっては元も子もないが、例えば複数企業がある手法で成功していたなら、それを裏付けとして広告主に提案するという場合もある。自身のインプットのためにも代理店は日夜行うステップだ。

制作・・・

広告主から企画への承認を得たら、実制作に移る。撮影場所の選定やキャスティング、並行して広告枠の確保やLP(Landing Page/広告を見た人に商品等を案内するウェブサイト)の制作もスタートする。ウェブ上で何らかのキャンペーンを実施する場合はシステム構築や景品選定の部署とも連携を図る。各所で起きるハプニングや難題を乗り越え、期日通りにリリースさせるのが代理店の力の見せどころとなる。

運用・・・

無事に世の中に出すことができたら、基本的には一山越えたことになる。ただ、例えば国際大会なら会期中のプロモーション切り替えなどが発生しうるし、特にそうしたことがなくても、広告を見た人からネガティブな意見が上がっていないか、商品は無事に使っていただけているかなどを逐次見ていかなければならない。昨今はSNSという拡散性の高いメディアがあるため、エゴサーチを経て目立った意見は可能な範囲で即時対応している場合も多い。

レビュー・・・

無事にすべてのプロモーションが完了したら、広告主へ総括資料を共有して成果や課題を報告する。そこで広告主の期待する数値やリアクションが出せることはもちろん、来季(次回)への有意義な提案ができると、双方の関係性がより良いものとなる。

スポーツプロモーションで起きている変化とは?

テレビや雑誌がメインだった世の中から、ウェブの台頭で様々なビジネスが変化したように、広告業界もここのところの変化は目覚ましい。スポーツに関わるものを中心に、いくつかのトピックスを紹介しよう。

・有名(強豪)だから安心、とは限らない

…かつては有名(強豪)な組織ほどテレビCMや交通広告といった影響力のある枠を買うことができ、よって人を集め、お金も集まり、さらに強くなる…というサイクルがあったが、今はその王道が崩れつつある。小さいメディアや無名の一般人でも爆発的な数値をきっかけに影響力を持つこともあれば、有料チャンネルやウェブ上でのライブ配信等を含めると競合するエンターテイメントも多く、価格競争も激化している。たとえ名の売れたクラブや企業であっても、今後はより多くの敵と戦っていかなければならない。

・SNSの台頭によるメディアの考え方

…そもそも従来はテレビや新聞といった告知媒体しか有力なものがなく、資金力がプロモーション力とニアリーイコールになりがちだった。しかしウェブというプラットフォームが整い、かつ近年はSNSが大きな影響力を持つ時代。マスメディアにも引き続き力があることはもちろんだが、広告宣伝をする側としては、あらゆるメディアを掲出候補として捉え、どの媒体にいつ・どのようなクリエイティブを出すか、戦略的なプランを組む必要が出てきた。一般ユーザーの影響力も大きくなっていることから、発信主体も含めて考える必要がますます出てきている。

どこまでを自社でやるかの線引き

…テレビCMや新聞広告の制作がプロに委ねられていたのは想像がつくところだが、片や昨今のYoutubeやSNSを見ると、一般人が作ったものでもクオリティに遜色ないものが散見される。当然企業としても内製した方が安価で済むし、自走できるのはひとつの強みとも考えられる。一方で、確実に当該試合に集客目標を達成すること、戦略的に顧客を確保していくこと、ミスなくオンスケジュールでメディアに露出し続けること・・・など、目標へのコミットをミスなく中長期的に確実なものとしたいときは、今もなおアウトソーシングが妥当だ。広告代理店側にとっても、提案を受ける広告主にとっても、今後この線引きを上手に判断することがますます求められていくだろう。

めざすはスポーツを輝かせるプロフェッショナル!

同じ競技同士でライバルになるクラブや選手がいることはスポーツにとって当然だが、ひとたび広告の世界となると、スポーツはもちろん、日々メディアを賑わせているアーティストのイベントやゲーム、一般人が配信するYoutubeまで、ありとあらゆるコンテンツが競い相手となりうる。

広告代理店にとってその全てに勝つことが至上命題ではないが、広告主のニーズや業界の変化を細やかに捉えながら、インパクトの最大化を求めて日夜奔走する。スポーツを輝かせることのできるポジションであることは間違いない。少しでも興味を持った人は、広告業界や各社の概要についてより深く調べてみるといいだろう。