2020年東京オリンピックを目前に控え、スポーツ業界が盛り上がりを見せていることは言うまでもない。その盛り上がりは今後も更に高まっていくと考えられる。
事実、2015年において5.5兆円であったスポーツ市場規模を2025年には15.2兆円まで拡大する方向性が政府によって掲げられている。そんなスポーツ市場において、注目度が高まっているのがスポーツメーカーだ。
就職希望ランキングでも上位に上がる人気の業界で、その事業領域もスポーツ用品に留まらない。また、スポーツメーカーと聞くとスポーツを競技として取り組んでいたような人が働く印象を持つだろう。
今回は、そんな熾烈を極めるスポーツメーカーへの新卒採用にて、スポーツ経験は有利に働くのか、重要視されるのか考察していく。
拡大する事業領域、取り扱うのはスポーツだけではない?
単にスポーツメーカーといっても、スポーツ用品に関する事業のみを取り扱っている訳ではない。ファッションにスポーツ要素を取り入れたアスレジャーを初めとするファッション関連事業やフィットネスのような健康関連事業など、その事業領域は急拡大している。
本段落ではその事例として、複数の事業を展開するスポーツメーカー大手2社を紹介したいと思う。
アディダス
言わずと知れた世界的大企業のアディダス。
世界のスポーツメーカー売上ではナイキに次ぐ2位を誇るり、サッカー日本代表の公式サプライヤーとしても知られている。
スポーツとファッションの融合が流行している近年、スポーツメーカーとしてその最前線を走っているのがアディダスである。
そんなアディダスの、主な事業は次の通りだ。
・アディダススポーツ パフォーマンス
アスリートやスポーツを本格的に行う人へ向けた事業。最大限のパフォーマンスを発揮できるようなウェアーやシューズを設計・開発している。
・アディダス オリジナルス
アスリートのために開発されたプロダクトの復刻商品から、現在のトレンドを反映させた新作モデルやコラボレーションによるプロダクトまで、幅広い商品展開が魅力。
・Y-3
日本が世界に誇るデザイナー山本耀司をクリエイティブ・ディレクターとして展開するスポーツとファッションを融合させた事業を展開している。
アシックス
国内スポーツメーカー売上ランキング堂々の1位を誇るアシックス。
60年以上の歴史をもち、トップアスリートから一般のユーザーまで幅広い顧客からの支持を受ける。海外売上比率約80%となる等、グローバル企業として進化をしている。
アシックスの事業は下記の3つに分類され、質の高いライフスタイルを創造するため、あらゆる可能性にチャレンジしている。
・アスレチックスポーツ事業
一般的にスポーツと呼ばれるものを対象。売上高の半分程度を占めるランニング事業を中心とし、あらゆるスポーツの高機能・高品質なシューズやアパレルを展開している。
・スポーツライフスタイル事業 ONITSUKA TIGER
スポーツがファッションの一部になっている市場が対象。ライフスタイルブランドの一つである「オニツカタイガー」を展開している。
・健康快適事業
男性用ビジネスシューズ「RUNWALK」、働く女性の機能パンプス「GIRO」、キッズ用シューズ「スクスク」など、健康・快適をキーワードとした事業を展開している。
スポーツ経験有無による自分に適した事業とは?
上記から分かるように、単にスポーツメーカーと言っても、スポーツをする人に向けたビ ジネスのみを行っているのではない。スポーツをしない人、ファッションとして取り入れている人をターゲットとしたビジネスや、健康を目的とした人へのビジネスなど、消費者のライフスタイルに関わってくる事業も展開しているのが特徴だ。アスレジャーの流行や、高齢化、人生100年時代などの高まりにより、スポーツメーカーと消費者の関わりは多様化している。
では、スポーツ経験の有無による適性がある事業とはなんだろうか?
スポーツ経験がある人はやはり、アスリートやスポーツをやる人に向けた事業への適性がある。そのような事業には、専門的な知識やプレイヤーとしての経験が必要とされ、活かされていく。実際のプレイヤー目線に立って事業を展開できることは強みとなるに違いない。
一方で、スポーツ経験のない人は、ファッションやライフスタイルに特化した事業への適性がある。顧客は、そのような事業の製品に対し、スポーツメーカーとしての機能性等も求めはするが、それ以上にデザイン性やファッション性を求めるだろう。
そのため、スポーツ経験の有無よりもデザインやファッションの専門的知識や流行への敏感さが重要となる。また、健康意識の高まりから顧客の幅も広がっており、利便性や安定性を求める顧客も増えているため、製品開発や製造においてもスポーツとは違う目線からの意見が重要になってくる。
このように、スポーツ経験の有無によって自分が活きる事業、適性がある事業は異なってくる。また、事業拡大に伴い、今後も多種多様な人材が必要とされるだろう。そのため、競技としてのスポーツ経験がスポーツメーカーへの新卒採用に重要であるとは言い難く、スポーツ経験がない人にとって採用の可能性は広がっていると思われる。
スポーツ経験がある人にとって、採用された後にその経験が活きていくことは大いにある。しかし、新卒採用において重要なのはスポーツ経験よりも、その経験を通して何が自分にできるのか、何を企業にもたらせるのか、どんな知識を活かせるのか、などの企業に対して自身の活躍の可能性をアピールすることである。陸上の経験者ならシューズの底の厚さ、サッカー経験者ならスパイクのスタッドの数、といったように経験者だからこそ主張ができることも多いはずだ。
スポーツ経験より、自分には何ができるか!
いかがだったであろうか。
ここまで、スポーツメーカーの事業展開から、向いている人、そして、スポーツ経験が新卒採用に有利となるかについて見てきた。
スポーツメーカーはターゲットを切り分け、複数の事業を展開しているとここまで述べてきた。アディダス、アシックス共に一番の核としている事業は、アスリートやスポーツをする人に向けた事業である。
しかし、売上を支えている事業や、伸びている事業等はスポーツメーカーによって異なり、それがアスリートやスポーツをする人に向けた事業であると一概には言えない。スポーツ経験があることは新卒採用において重要とは言えない が、その経験は自身の強みとなり、活かすことができる可能性は大いにある。まずは、自己分析をしっかり行い、自分に適性がある事業、自分の強みが活かせる事業を選定していくことが重要である。