プロ野球で活躍するトレーナーの役割と種類

プロの世界は厳しい、そうわかりながらも憧れる人は多い。仮に選手としての道が閉ざされても、スタッフとして働く道は残されている。なかでも最近注目度の高い職種のひとつが、「スポーツトレーナー」だ。選手がシーズンを戦い抜くコンディションや怪我からの再起を傍で支えるキーパーソン、果たしてどうしたらなれるのだろうか?

プロ野球チームのトレーナーとその特徴

 プロ野球のトレーナーとは、その名の通り国内外問わずに活躍するプロ野球選手の日々のトレーニング指導、基礎的な身体づくりや健康管理も含めて総合的にサポートするプロフェッショナルのことを言う。テレビを始めとするメディアで見ていると、多くの人の歓声を浴びながら華々しく活躍するイメージが先行するかもしれないが、実際はその影でたゆまない努力と苦悩が隠されている。

だからこそ、近しい距離で心身を支えるトレーナーの存在が重要になるのだ。もちろん球団の監督やコーチとの連携も欠かせず、チームの状況も随時キャッチアップしながら、最適なバックアップを模索する。

 以上については、野球に限らずプロチームに関わるトレーナーに共通する部分も大きいが、日本のプロ野球の特徴を挙げるとするならば、「日本プロ野球トレーナー協会」という団体が存在することだ。協会のサイトによれば設立は1960年、さらにその前からトレーナーという職業がプロ野球の世界にはあったという。30年以上前までは、各チームにトレーナーは2,3人程度だったそうだが、現在は多くて12人、少なくても8人は在籍しているとのこと。

ほとんどが鍼灸、マッサージ師の資格を持ち、20年ほど前からは理学療法士もリハビリ担当として入団している。メインの活動は球団ごとになるだろうが、プロ野球に関わるトレーナーとして横の繋がりを持ち、切磋琢磨する素地があることは他のスポーツを見渡しても貴重と言えるに違いない。

球団のトレーナーにはこんな役割がある!

前項で、各チームにトレーナーが多くて12人、少なくとも8人…と見て、予想以上に多い、どうやって役割を分けているんだろうと思った人もいるかも。チームによっても異なるのはもちろんだが、例えば下記のように一部重なり合いながらも、主とする領域を持って選手のケアやトレーニングにあたる。

アスレティックトレーナー

各スポーツの競技者が再考のパフォーマンスを発揮できるよう、健康管理やスポーツ障害・外傷の予防にあたり、もしアクシデントが起きてしまった場合は応急処置を担うポジション。仮に同じ怪我であっても、応急処置の段階でいつ・何をするかによって予後が変わることも多く、冷静な判断が求められるスポーツドクターとの連携も重要だ。さらに、その選手が競技復帰をめざすにあたっては、リハビリテーションや体力の回復にも寄り添い、競技者を支え続ける任務を遂行する。

コンディショニングトレーナー

スポーツ選手の試合や練習前後の体調管理や怪我の予防を、一人ひとりの骨格や筋バランスなどを踏まえながら行う。具体的には、練習のしすぎや負荷のかかるトレーニングにより硬くなった関節や筋肉をほぐしたり、逆にうまく使い切れていない筋肉があればそれを本人に伝え、意識して鍛えることで負荷を分散した身体の使い方ができるように導く。選手として成長し続けることは大事だが、何より試合や大会にピークを持ってこられるよう、オフも含めて調整を計らう。

パーソナルトレーナー

1対1で個々のパフォーマンスアップや、ウィークポイントの改善にあたる。チーム全体を対象としているトレーナーよりも密度の濃い関わり合いになるため、信頼関係をしっかり築き、身体のことはもちろんメンタル面でもつつがなくサポートできるよう心掛ける。

資格は何が必要なの?全部できないとダメ?

資格についても先のパートで触れているところがあったが、鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師は持っている人が多いようだ。医学的なアプローチはチームドクターにできても、痛みの緩和や可動域の伸展、いち早い疲労回復にはこうした技術を持ったプロフェッショナルの介入が大きな力になりうる。

 ほかにも柔道整復師や、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、医療連携という意味では理学療法士の活躍も期待が大きい。

必ずしも全ての資格を持っていなければいけない、ということではなく、各分野のスペシャリストが球団の中で手を取り合い、情報交換や知見の蓄積のなかで、選手各々に合ったケアやトレーニングを選択できるようやりくりすることが肝要だろう。

やっぱりプロ野球の世界はトレーナーも稼げる?

巨額の年俸が印象深いプロ野球の世界だが、トレーナーの気になる年収は300万~1,000万円程度と言われている。ずいぶん開きがあるのは、球団や経験、チーフトレーナーかそうでないかなど、変動要素がいくつもあるからだ。

パーソナルトレーナーによっては有名選手の専属を勝ち取ったり、担当した選手が成績を大きく伸ばしたりすることで自身の価値が上がり、1,000万円以上の年収も期待できる。

もちろんすぐにその座にたどり着けるかというと難しい側面もあるが、整体院や整骨院など、スポーツ選手のケアに関われる現場でまずは十分な経験を積み、自分としても「選手たちを任せてください!」と言える自信を育むといいだろう。

志高く、努力と粘り強さで夢を勝ち取ろう!

ひとたびプロ野球球団でトレーナー職に就くことができれば、球団は全国にあるし、実業団なども含めると活躍の場はたくさんあることから、安定した生活を送ることができるだろう。

ただ、同じようにプロ野球に携わりたい、選手の活躍を支える頼もしい存在になりたい、と思っている人は多く、軌道に乗せるまでには努力と粘り強さが必要。志高く、やりがいのある日々に向けて突っ走ろう。